漢城(現ソウル)にある大韓帝国の迎賓館・ソンタクホテル。
伊藤博文統監が主催する晩餐会が催された翌日、
ホテルの支配人ソンタク女史がとつぜん姿を消した――
16歳のホテルボーイ・裵正根と梨花学堂の学生・李福林は、
女史失踪の謎を追うが……。
日清戦争と日露戦争の勝利で朝鮮の属国化を進めた日本は、1905年の第2次日韓協約(乙巳条約)によって大韓帝国の外交権を奪い、漢城に統監府(後の総督府)を設置、支配の度を一段と強めていきます。
大韓帝国皇帝・高宗は、国の独立を守ろうと手をつくしますが、そのなかである〝事件〟が起きます。
本書は、日本の植民地支配(1910年の韓国併合)が始まる3年前の1907年に、じっさいに起きたその〝事件〟をもとに創作された物語。
韓国の独立を守ろうと力を尽くす人びとや、伊藤博文、李完用などの実在した歴史的人物も登場。西欧文明が導入されていったころの朝鮮半島の開化期の風景とともに、史実をなぞりながら、手に汗にぎる歴史ミステリーが展開します!
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〈著者〉
チョン ミョンソプ (鄭 明燮)
1973年ソウル生まれ。大企業のサラリーマンやコーヒーを淹れるバリスタを経て、現在は多様なジャンルの文章を執筆する専業作家として活動中。
2006年歴史推理小説『赤牌』全二巻で本格的に作家活動を開始。2013年第1回ジクソー小説文学賞最優秀賞を受賞。2016年第21回釜山国際映画祭でNEWクリエイター賞を受賞。現在「韓国ミステリー作家会議」や「無団(無境界作家団=境界のない作家団)」作家グループで活動中。
著書:青少年小説や児童小説に『対馬の少女』、『ジクソーパズルの子ども、アロ』、『名探偵の誕生』、『消えた出会い』、『どういうわけか猫探偵』、『南山奥の二人の記者』などがある。青少年テーマ小説集『アンドロメダ・ガール』に短編「大人になりにくい」、『広場に立つ』に短編「破壊されたこども」、『私は美徳ですか?』に「ゾンビ」を掲載。
〈訳者〉
北村幸子 (きたむら さちこ)
立命館大学文学部史学科日本史専攻卒。30年間大阪の小学校に勤務。退職後渡韓、嶺南大学外国語教育院で日本語教師をしながら、啓明大学大学院日本学科修士卒。2010年に帰国後、オリニほんやく会で翻訳を学ぶ。
〈解説〉
戸塚悦朗 (とつか えつろう) 現職:弁護士。龍谷大学社会科学研究所付属安重根東洋平和研究センター客員研究員。韓国「併合」100年市民ネットワーク共同代表として日韓旧条約の効力問題および安重根義軍参謀中将裁判の不法性に関する研究を進める。
主著:『「徴用工問題」とは何か?―韓国大法院判決が問うもの』(明石書店)、『歴史認識と日韓の「和解」への道』(日本評論社)、『日韓関係の危機をどう乗り越えるか?―植民地支配責任のとりかた』(アジェンダ・プロジェクト)他。
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