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三〇年にわたる調査研究の成果を凝集した決定版評伝

多胡吉郎

空の神様けむいので
ラスト・プリンセス 徳恵翁主(トッケオンジュ)の真実


2021年9月刊
四六判並製 334頁
定価 2300円+税
ISBN978-4-87714-489-0 C0023


●目次
●書評・関連記事
●関連書





くむくむくと
黒い煙が
空の御殿へ上がったら 
空の神様けむいので
涙をぼろぼろ流してる

  (徳恵翁主の童詩「雨」)


――詩がたたえるみずみずしい感性、ひとりの人間としての想い。時代の強いた困難を、「文の林」=「言葉」によって乗り越えようとした人――朝鮮王朝最後の王女、徳恵(トッケ)翁主(オンジュ)

生まれながらに日本と朝鮮の狭間に生きる運命を背負わされ、日本留学、日本人伯爵との政略結婚の果てに心の病を得て、「もの言わぬ人」となった悲劇のプリンセス。

だが彼女には少女の頃、童詩に和歌に才能を発揮し、輝くばかりの言葉の精華を紡ぎ「詩の天才」と呼ばれた時代があった――

「もの言わぬ人」の「言葉」を追い求め、新発掘の資料から描破するラスト・プリンセスの真実。徳恵翁主評伝の決定版。



徳恵翁主 トッケオンジュ(徳恵姫)

1912年、京城(現ソウル)にて、父・高宗(コジョン)(朝鮮王朝最後の王)、母・福寧堂梁氏(ポンニョンダンヤンシ)との間に生まれる。
朝鮮王族は日本の植民地化以降、日本の皇族に編入されていた。
京城の日出小学校時代に詩の才能が開花、メディアでも「童詩の神様」「詩の天才」などと讃えられる。
1925年、東京の女子学習院に転入学。東京に暮らす皇太子の李垠・方子夫妻の許に身を寄せる。
1930年、統合失調症を発症。
1931年、女子学習院卒業。旧対馬藩当主・宗武志伯爵と結婚。
1932年、娘の正恵が誕生。その後も病は進行し、日本敗戦後の1946年(推定)、松沢病院へ入院。
1955年、宗武志と離婚。
1956年、娘・正恵の失踪と死。
1962年、韓国に帰国。ソウル大学病院に入院。
1969年、ソウル大学病院を出て、昌徳宮・楽善斎の寿康斎に暮らす。
1989年、死去。





〈著者〉
多胡 吉郎(たご きちろう)

作家。1956年東京生まれ。
1980年、NHKに入局。ディレクター、プロデューサーとして多くの番組を手がける。2002年、ロンドン勤務を最後に独立、英国に留まって文筆の道に入る。2009年、日本に帰国。
<著書>
『吾輩はロンドンである』(文藝春秋)、『リリー、モーツァルトを弾いて下さい』(河出書房新社)、『わたしの歌を、あなたに――柳兼子、絶唱の朝鮮』(河出書房新社)、『韓の国の家族』(淡交社)、『物語のように読む朝鮮王朝五百年』(角川書店)、『長沢鼎 ブドウ王となったラスト・サムライ――海を越え、地に熟し』(現代書館)、『漱石とホームズのロンドン――文豪と名探偵 百年の物語』(現代書館)、『生命の詩人・尹東柱――『空と風と星と詩』誕生の秘蹟』(影書房)他。
訳書に『井戸茶碗の真実――いま明かされる日韓陶芸史最大のミステリー』(趙誠主著、影書房)がある。



◆『空の神様けむいので――ラスト・プリンセス 徳恵翁主の真実』 目次◆

プロローグ
第Ⅰ部 朝鮮
 第1章 徳寿宮の歓び――幼年時代
 第2章 日本人児童とともに――京城・日出小学校 その1
 第3章 花開く詩才――京城・日出小学校 その2
 第4章 朝鮮にこのプリンセスあり――京城・日出小学校 その3

第Ⅱ部 日本
 第5章 異郷につむぐ和歌――東京・女子学習院 その1
 第6章 別れの数々――東京・女子学習院 その2
 第7章 発病、そして結婚へ――東京・女子学習院 その3
 第8章 もの言わぬ人

第Ⅲ部 大韓民国
 第9章 再びの祖国。蘇る「びら」の思い出
  *
 あとがき
 徳恵(徳恵翁主)関連略年譜

 











書 評





●「民団新聞」2021年10月13日より
評者=大島裕史さん(ノンフィクションライター)

 








◆関連書◆


『生命の詩人・尹東柱――『空と風と星と詩』誕生の秘蹟』 多胡吉郎 著

『井戸茶碗の真実――いま明かされる日韓陶芸史最大のミステリー』 趙誠主 著/多胡吉郎 訳

『小説 日清戦争――甲午の年の蜂起』 金重明 著

『ミョンヘ』 キム ソヨン 著/吉仲貴美子・梁玉順 訳/仲村 修 解説 【中学生以上~大人まで】
《YA! STAND UPシリーズ》

『あの夏のソウル』 イ ヒョン 著/下橋美和 訳/解説:徐台教 【中学生以上~大人まで】
《YA! STAND UPシリーズ》

『1945,鉄原』 イ ヒョン 著/梁玉順 訳/解説:仲村修 【中学生以上~大人まで】
《YA! STAND UPシリーズ》

『「韓国からの通信」の時代―韓国・危機の15年を日韓のジャーナリズムはいかにたたかったか』 池 明観 著

『あの壁まで』 黄 英治(ファン・ヨンチ) 著

  『韓国歴史紀行』 崔碩義(チェ・ソギ) 著

  『民族文化財を探し求めて』 慧門(ヘ・ムン) 著

  『古代朝鮮と万葉の世紀』 朴春日(パク・チュニル) 著