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〈装画:李 晶玉〉
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今も愛され、読み継がれる韓国の国民的作家の自伝的小説

(パク) 婉緒(ワンソ)/真野保久・朴暻恩・李正福 訳

あんなにあった酸葉(すいば)をだれがみんな食べたのか/あの山は本当にそこにあったのか

2023年5月刊
四六判 上製 530頁
定価 2900円+税
ISBN978-4-87714-496-8 C0097


●目次
●書評
●関連書







〈私たちはこのように生きてきたの〉――


本の植民地支配下、幼年時代を過ごした農村で暮らし。
何度も入れ替わる支配体制に翻弄される朝鮮戦争下のソウルでの日々。
成長期を迎えた少女時代の〝家族〟との葛藤。
時に家父長制を体現するような母親との確執。
そして一家の大黒柱となり自立した大人の女性へ――

鋭い感受性と洞察力、そして抜群の記憶力に基づいて、開城(ケソン)近郊の田園風景の中で過ごした幼少期をみずみずしく描写し、ソウルで迎えた日本の植民地支配からの解放、19歳の時に勃発した朝鮮戦争下を必死に生き延びた凄絶な苦闘の日々をリアリティあふれる筆致で描き出した本作は、優れた「成長小説」であると同時に、「純粋に記憶力だけに依拠」して書かれた現代の稀有な証言・記録の書であるともいえます。

現代韓国を代表する作家が、自らの波乱に満ちた半生をつづった自叙伝小説、2著を新訳・合本。

内外で高く評価され、読み継がれる朴婉緒の自伝的小説。
累計150万部を超すロングセラー!



*【カバー装画=李晶玉】
〈それは私が木蓮になり長い冬の眠りから覚めて目にした光景、極めて残酷な人間が犯した狂気の沙汰に対する悲鳴だった。〉(本文より)
カバー装画は、朝鮮戦争時の避難途中で見かけた、爆撃で灰になった村の跡に唯一残った木蓮の木を見つけた主人公が、その木になり代わったと想像し、思わず声が出たという場面から、画家の李晶玉(リ・ジョンオク)さんに描き下ろしていただきました。



〈著・訳者略歴〉
朴 婉緒(パク ワンソ)
(1931.10.20-2011.1.22 享年79)

1931年、開城(現在の北朝鮮南部の都市)近くの田園地帯で両班の家系に生まれる。14歳の時、日本の植民地支配から解放。19歳でソウル大学国文科に入学するも、すぐに朝鮮戦争が勃発。戦時下に兄と叔父を亡くす。戦後、ソウルの米軍用購買部・PXに勤務。学業を諦め、そこで知り合った韓国人男性と22歳で結婚、一男四女を産み育てる。
39歳の時(1970年)に小説「裸木」で文壇にデビュー。長編小説「都市の凶年」や「よろめく午後」では、戦後の中産層のゆがんだ物質主義的な欲求と虚栄意識を批判的に描いた。中編小説「母さんの杭」では、母が手術後の病床で兄の朝鮮戦争時の悲劇的な死を思い出し、恐怖のあまり発狂する場面を母と「私」だけが共有する記憶として描き出し、李箱文学賞を受賞した(山田佳子訳『現代韓国短編選 下』所収、岩波書店、2002)。また、1990年には「未忘」で大韓民国文学賞を受賞するなど、韓国の主だった文学賞を数多く受賞し、誰もが知る国民的作家となった。
邦訳に、「盗まれた貧しさ」(古山高麗雄編『韓国現代文学13人集』所収、新潮社、1981)、『結婚(原題:立っている女)』(中野宣子訳、學藝書林、1992)、『新女性を生きよ(原題:あんなにあった酸葉をだれがみんな食べたのか)』(朴福美訳、梨の木舎、1999)、『慟哭―神よ、答えたまえ』(加来順子訳、2014)、『あの山は、本当にそこにあったのだろうか』(橋本智保訳、以上かんよう出版、2017)ほか。また、アメリカ、フランス、スペイン、タイ、中国などでも諸作品が翻訳・出版されている。


真野保久(まの やすひさ)
1948年富山県生まれ。神奈川大学在学中に日韓近代史に関心を持ち、歴史を学ぶ。横浜市に勤務しながら仲間たちと韓国現代文学を読む。定年退職後、延世大語学堂に語学留学。翻訳書に、朝鮮戦争を扱った中短編小説集『王陵と駐屯軍―朝鮮戦争と韓国の戦後派文学』(朴暻恩氏との共訳、凱風社、2014年)がある。


朴暻恩(박경은 パク キョンウン)
1980年ソウル生まれ。2006年来日。東京女子大学現代文化部卒業後、外国語学院で韓国語講師として勤務。翻訳書に『王陵と駐屯軍―朝鮮戦争と韓国の戦後派文学』(真野保久氏との共訳、凱風社、2014年)がある。


李正福(이정복 イ ジョンボク)
1982年韓国で生まれる。2006年来日し、横浜国立大学教育学部卒業。2010年APEC JAPANの韓国記者団の通訳や2011年横浜トリエンナーレで北仲スクール(横浜文化創造都市スクール)が主催した「アートと戦争」にも参加。以後、企業向けの翻訳・通訳の仕事と韓国語講師として活動。


(本書刊行時点)





 
◉『あんなにあった酸葉をだれがみんな食べたのか/あの山は本当にそこにあったのか』目次


あんなにあった酸葉をだれがみんな食べたのか

 再びの序文に 
 《作家の言葉》 自画像を描くように書いた文章
   *
 1 野生の時代
 2 果てしなく遠いソウル
 3 城外で
 4 友だちのいない子
 5 三角庭の家 
 6 祖父と祖母 
 7 兄と母 
 8 故郷の春 
 9 たたきつけられた表札 
 10 暗中模索 
 11 その前夜の平和 
 12 輝かしい予感 

  * * *

あの山は本当にそこにあったのか

 《作家の言葉》 私たちはこのように生きてきたの
   *
 夢を見たんだ、だけどもう見ない
 臨津江だけは越えるな 
 狂った白木蓮 
 ときには粃も怒りを感じる 
 真夏の死 
 冬木立 
 門外の男たち 
 エピローグ 
 ……………………
  訳者解説 
  訳者あとがき


 






書 評



◆『図書新聞』 (2023年8月19日号)
評者:林浩治氏(文芸評論家)







◆『ふぇみん』 (2023年10月15日号)








◆関連書◆

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