「ドン底に落ちた! もがけ、もがけ」
〝生活〟不能の天才意識、死への執着、妻の家出、病気、貧困、ナショナリズム、大逆事件……啄木を〈生きさせた〉ものとは?
1946年、敗戦直後の石炭不足解消のために、北海道・美流渡炭鉱へ石炭増産隊として派遣された著者は、炭住の壁に書かれた啄木の歌をみつけた。
「今日もまた胸に痛みあり。
死ぬならば、
ふるさとに行きて死なむと思ふ」
「地図の上朝鮮国に黒々と墨をぬりつゝ秋風を聞く」
戦争中、異国の地での強制労働に苦しむ朝鮮人労働者の心を支えたであろう啄木とは何者か? ナショナリズムを沸かせた日露戦争、盛り上がる労働運動、朝鮮の植民地化、大逆事件と強権的な社会主義弾圧の衝撃。〝安楽を要求するのは人間の権利である〟(「田園の思慕」)――国家権力の強大化が進んだ明治後期、人としての理想を求めてもがき続けた啄木の生涯と思想に、その短歌、詩、日記、書簡、評論から迫る。
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〈著者〉
碓田のぼる (うすだ のぼる)
1928年長野県に生まれる。
現在、新日本歌人協会全国幹事。民主主義文学会会員。日本文芸家協会会員。国際啄木学会会員。
[著書]『渡辺順三研究』(かもがわ出版, 2007年)、『石川啄木――その社会主義への道』(かもがわ出版、2004年)、『占領軍検閲と戦後短歌―続評伝・渡辺順三』(かもがわ出版,
2001年)、『石川啄木と「大逆事件」(新日本新書)』( 新日本出版社, 1990年)ほか。
[歌集]『夜明け前』(長谷川書房)、『列の中』(長谷川書房)、『花どき』(第10回多喜二・百合子賞受賞、長谷川書房)ほか。 |
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