アジア・太平洋戦争日本人戦死者とは何か


山田昭次
全国戦没者追悼式批判
――軍事大国化への布石と遺族の苦悩


2014年3月刊
四六判上製238頁
定価 2600円+税
ISBN978-4-87714-444-9


●目次
●書評
●関連書



年8月15日に開催される全国戦没者追悼式。そこでは、国から謝罪の言葉は聞かれず、国が起こした戦争で肉親を奪われた人々の怒りや憤りは抑圧され、回収されてゆく――
「靖国」の傍らで、アジア・太平洋戦争日本人戦死者を「殉国者」として顕彰する式典が連綿と続いてきた意味とは何か。
歴代首相による「式辞」や戦死者遺族の手記等を読み解きつつ、政府の意図を検証する。



〈著者略歴〉

山田昭次(やまだ・しょうじ)

1930年 埼玉県に生まれる.
1953年 立教大学文学部史学科卒業.
1962~95年 立教大学一般教育部に勤務.
立教大学名誉教授.

[著 書]
『金子文子――自己・天皇制国家・朝鮮人』(影書房、1996年)
『関東大震災時の朝鮮人虐殺――その国家責任と民衆責任』(創史社、2003年)
『植民地支配・戦争・戦後の責任―朝鮮・中国への視点の模索』 (創史社、2005年)
『震災・戒厳令・虐殺――関東大震災85周年朝鮮人犠牲者追悼シンポジウム―事件の真相糾明と被害者の名誉回復を求めて』(三一書房、2008年/共著)
『関東大震災時の朝鮮人虐殺とその後――虐殺の国家責任と民衆責任』(創史社、2011年) 
その他多数





◆『全国戦没者追悼式批判』 目次◆

はじめに――アジア・太平洋戦争日本人戦死者とは何か

一 アジア・太平洋戦争日本人戦死者の顕彰による
   対国家忠誠心の再興を目指す政府主催の全国戦没者追悼式の成立と展開

 1 初期全国戦没者追悼式開催とその歴史的背景
 2 本格的全国戦没者追悼式の開始
 3 日本人戦死者遺族や一般民衆の全国戦没者追悼式や戦死者叙勲の受け止め方

二 靖国神社法制定の挫折から中曾根康弘首相の靖国神社公式参拝へ

 1 靖国神社法の出現とその制定の挫折
 2 「靖国神社公式参拝実現のための一千万署名運動」から中曾根康弘首相の靖国神社公式参拝へ
 3 中国からの批判による中曾根首相の靖国神社参拝の中止とダブルスタンダードの発生
   
三 アジアの戦争犠牲者との連帯を目指した日本人戦死者遺族の思想と運動

 1 平和遺族会全国連絡会の成立
 2 戦病死した夫との愛別離苦を通じてアジアの戦死者遺族の愛別離苦に想いを寄せた小栗竹子

四 日本政府首脳のダブルスタンダードの定着

 1 日本政府の日本人戦死者の顕彰から追悼への移行と日本人戦死者の殉国者扱いの維持
  2 細川護熙首相のアジア・太平洋戦争侵略戦争論の登場と右派たちの反対運動の展開

五 戦後五〇年国会決議と村山談話

 1 戦後五〇年国会決議と右派の反対行動
 2 村山首相の全国戦没者追悼式の式辞と戦後五〇年談話
 3 橋本、小渕、森首相たちの村山談話の継承の内実
   
六 小泉純一郎首相の靖国神社参拝と日本人戦死者の積極的顕彰の復活

 1 小泉首相の靖国神社参拝
 2 自衛隊に対する日本人民衆の積極的支持を引き出すための小泉首相の日本人戦死者顕彰
 3 小泉首相以後の首相たちの靖国問題をめぐる動向
 4 高橋三郎の全国戦没者追悼式批判の出現
    ――日本民衆に対する天皇制国家の戦争責任意識の欠如の指摘

七 「名誉の戦死者」の名の下に抑圧された戦死者遺族の悲しみと
   異端の思想の生誕


 1 問題の提起
 2 戦死者遺族の悲しみの表現の抑圧
 3 戦死者遺族の悲しみの表現を抑圧した諸相
 4 隠されていた戦死者遺族の異端の声

終章 「軍備の根底たる愛国心」高揚政策との対決のために
      ――戦後に残した日本民衆の未決の思想的課題

 
 参考文献一覧
 あとがき








書 評



●『週刊新社会』 2014.8.12





●『わだつみのこえ』第140号 2014.7.18








●『東京新聞』(夕刊) 2014.7.3








●『朝鮮新報』 2014.6.23







●『出版ニュース』 2014.4.下


 毎年8月15日に開催される政府主催の全国戦没者追悼式。本書は、首相の靖国神社公式参拝のように注意や関心が向けられなかった全国戦没者追悼式が孕む問題を検証する。著者は、最初の開催(1952年)までさかのぼり、天皇の「お言葉」や首相たちの式辞、遺族の受けとめ方の経緯を追いながら、日本人戦死者の意味づけに「対国家忠誠心の再興を目指す」という政治的意図を見出す。「名誉の戦死者」=「殉国者」の名の下に抑圧された戦死者遺族の悲しみや憤りが「平和遺族会」の成立など反戦・平和の志向となる流れを描き、戦争責任を果たし得ぬままでいる戦後日本の国家責任を糺す。





●「9条連ニュース」 2014.4.20












◆関連書◆


 『金子文子――自己・天皇制国家・朝鮮人』 山田昭次 著

 『学校に思想・良心の自由を――君が代不起立、運動・歴史・思想』 
 学校に対する君が代斉唱、日の丸掲揚の強制を憂慮する会編/山田昭次、安川寿之輔 他著

 『〈物語〉の廃墟から――高橋哲哉対話・・時評集1995-2004』 高橋哲哉 著

 『秤にかけてはならない――日朝問題を考える座標軸』 徐京植 著

 『定本 千鳥ケ淵へ行きましたか』 石川逸子詩集

 『〈日本の戦争〉と詩人たち』 石川逸子 著


 『難波大助・虎ノ門事件――愛を求めたテロリスト』 中原静子 著

 『治安維持法下に生きて――高沖陽造の証言』 太田哲男・高村宏・本村四郎・鷲山恭彦 編