死者たちの無言の声に耳をすまして……

石川逸子 詩集
定本
千鳥ケ淵へ行きましたか



2005年8月刊
四六判上製160頁
定価 1800円+税
ISBN978-4-87714-335-0


●目次
●書評
●関連書




なたは千鳥が淵戦没者墓苑を知っていますか?――“皇居”と“靖国”の傍らでさざめきあう死者たちの無念の声、痛恨の叫びを、どうか聞き届けてください。
1982年より20年以上にわたってミニ通信「ヒロシマ・ナガサキを考える」を発行しつづけ、旧日本軍の犯した戦争を問いつづけてきた著者の代表的詩集。10年に及ぶ“ドラマティック・リーディング”公演で深い感動と共感を多くの人に呼び起こした長篇詩集に、新たに詩とエッセイを増補した決定版。

〈著者略歴〉
石川逸子(いしかわ・いつこ)
1933年、東京生まれ。
お茶の水女子大学史学科卒業。
1982年より、ミニ通信「ヒロシマ・ナガサキを考える」を発行。

[主な著書]
『われ砕けて――源実朝に寄せて』(文藝書房、2005年)
『〈日本の戦争〉と詩人たち』(影書房、2004年)
『僕は小さな灰になって――劣化ウラン弾を知っていますか』(共著、西田書店、2003年)
『てこな 女たち』(西田書店、2003年)
『「従軍慰安婦」にされた少女たち』(岩波ジュニア新書、1993年)
『ゆれる無槿花』(花神社、1991年)
『ヒロシマ・死者たちの声』(径書房、1990年) など

(本書刊行時点)





◆『定本 千鳥ケ淵へ行きましたか』目次◆

千鳥ケ淵へ行きましたか
  1 千鳥ケ淵へ
  2 名のない人たち
  3 特攻
  4 娘の部屋
  5 母恋うる部屋
  6 石の碑
  7 できない計算
  8 たった一人の顔
  9 第一室(ウサギ追いしかの山)
  10 第二室(ヒコクミンの母)
  11 第二室(チョヌン ヨギエ イツスムニダ)
  12 第三室(生まれてはじめて)
  13 第三室(ウェイ シェンマ?)
  14 第四室(異国の畑で)
  15 第四室(南国の雑木林に)
  16 さくらの下で
  17 第五室(どんな春が)
  18 第五室(タイピンの土饅頭)
  19 第五室(白骨街道)
  20 第五室(ウー・トゥンヨンじいさん)
  21 第六室(飢えの島)
  22 三たび千鳥ケ淵で

いくど春がきてまた春がきて

1995年・千鳥ケ淵で

ひとつぶの風となって せめて――マレーシア無辜生命鎮魂詩

2005・卓庚鉉さんのこと
  *
あとがき
引用・参考文献








書 評




● 『図書新聞』2005年10月15日号

 理不尽な死を悼む

 千鳥ケ淵には戦没者墓苑がある。靖国神社のすぐ近くで、こちらはなぜかあまり人が訪れない。(略)
 氏名の判明しない人たちの骨。いずれも戦闘に参加した軍人軍属、一般人という。名前がわかれば遺族のところに行くだろう。靖国はといえば、神社であって骨は引き取らない。そういう場所だ。
 墓苑の遺骨に語りかけ、その理不尽な死を悼む詩が、連祷のようにつづく。そのほかに、戦争にまきこまれた異国の人たちの死に思いをとどけようとする。ここにはいくつもの数字が並ぶが、そこにある一人一人のいのちを思う戦争反対の怒りの詩集である。戦後40年に初版、50年に増補版、この60年にはさらに二編を加えて「定本」とした。





●『世界へ未来へ 9条連ニュース』

 先の大戦に際し、海外で戦死した約240万人のうち、遺族に届かない遺骨、25万体余が千鳥ケ淵戦没者墓苑に葬られている。
 特に日本軍によって虫けらのように扱われた中国人、朝鮮人、マライ人たちの骨には、ただ泥と血と涙が滲んだまま、ここに閉じ込められている。
 著者はもの言えぬ彼らの声を、掬い上げ、詩に昇華させた。
 60年の時を隔ててなお、読む者の胸に深く突き刺さる。









◆関連書◆

石川逸子著
〈日本の戦争〉と詩人たち
尹東柱全詩集
空と風と星と詩
富永正三著
あるB・C級戦犯の戦後史
肥田舜太郎著
広島の消えた日