★もう、電力会社にはまかせられない!
小坂正則著
市民電力会社をつくろう!
――自然エネルギーで地域の自立と再生を
2012年4月刊
四六判並製 198頁
定価 1500円+税
ISBN978-4-87714-425-8 C0036
●目次
●書評
●関連書
脱原発と自然エネルギー推進は車の両輪。
「電気が足りない」というなら、より安全で環境負荷の少ないクリーンな電気を、私たちがつくろうではありませんか! 木質バイオマスの利用も進めれば、CO2は削減され、山はよみがえり、安定した雇用が生まれ、地域経済が元気になり、過疎の村にも若者が帰ってくる!――
作家・松下竜一氏の「暗闇の思想」に学び、松下氏をはじめ仲間たちと九州・大分の地で反原発運動に取り組みながら、九州初の自然エネルギー推進NPOを設立、市民オーナー制で太陽光発電システムを公共施設に設置したり、薪ストーブやペレット・ストーブでバイオマス利用の促進をはかるなど、自然エネルギー普及のために実践的に力を注いできた著者が、「市民の市民による市民のための電力会社」設立へ向けた熱い思いを綴る、ユニークな実践とアイデア満載の書。
〈著者略歴〉
小坂正則(こさか・まさのり)
1953年、大分市生まれ。
1972年、九州産業大学芸術学部写真学科入学。入学と同時に新聞部に入部、学生運動に参加。
1976年、同大学自主退学。
1978年から神奈川県川崎市の郵便局で郵便局員として働きつつ、地域で生協運動やせっけん運動、リサイクル運動などに関わる。
1985年、大分へ転勤となり帰郷。2011年3月の退職まで郵便局で働きながら、作家の松下竜一氏らとともに反・脱原発運動に取り組む。
2001年、九州初の自然エネルギー推進NPOとして、「九州・自然エネルギー推進ネットワーク」を設立。市民オーナー制で太陽光発電施設を設置したり(2011年までに9機)、薪ストーブやペレット・ストーブを普及させてバイオマス利用の促進をはかるなど、自然エネルギーの普及推進活動に積極的に取り組む。また、大分県環境教育アドバイザーとして、地域や学校などで学習会等の講師としても奔走している。
現在、NPO法人 九州・自然エネルギー推進ネットワーク代表理事。
脱原発大分ネットワーク事務局長。
(本書刊行時点)
書 評
●「アジェンダ」第37号(2012年夏号)
本書は(前略)福島原発事故を経て、今度こそ「市民電力会社」を実現しようという小坂さんの強い想いが、これまでの経歴とともに述べられています。
「市民電力会社」の構想は、地域独占体制に守られながら原発を使ってきた既存の電力会社の電気ではなく、太陽光や風力などの自然エネルギーを利用して、「より安全で環境に負荷が少なく、すべての人の命を守るための、市民のための電気」を自分たちで作って消費しようというものです。
もちろん今の法律の下では実現は不可能でしょう。しかし、発送電の分離をはじめ電力自由化が本当に進められるのであれば、それは夢ではありません。小坂さんの考えは、「まずは日本初の『クリーンな自然エネルギーの電気だけを販売する市民電力会社』をスタート」させることです。
本書では、小坂さんがこれまで大分県で仲間と共に取り組んでこられたさまざまな活動が紹介されています。そこには、今できることは何でもやる、そういう姿勢が強く感じられます。既存の電力会社に対抗して経済的な影響力を行使できる勢力となること、「いつまでも『反対派』で終始する市民運動から脱却したかった」と述べられています。
具体的には、市民共同発電所として、これまでに大分県内の公共施設に太陽光発電を9基設置しています。そのための建設資金の調達の苦労なども本書には書かれています。
これらと共に、電気だけでなく、広くエネルギー源として木質バイオマスの活用も積極的に進められています。造園業者と関係を作って剪定廃材を薪燃料にして販売したり、木質ペレット燃料やペレット・ストーブの取り扱いも始めています。これらの普及のための講演会やイベントも精力的にされています。
また、小坂さんは2004年に亡くなられた作家の松下竜一さんに強く影響を受けられたそうです。「もう、ここらで、ほどほどでいいんじゃないですか」。本書のエピローグにある、金儲け主義を批判した松下さんの問いかけにもう一度まじめに向き合う必要があるという小坂さんの意見には、私も全くその通りだと思います。
「脱原発を実現していくために自分は何をすればいいのか」、そう考えておられる方は、ぜひ一度、本書を読んでみてください。(編集部員 谷野隆)
●「西日本新聞」2012.06.17
http://www.nishinippon.co.jp/nlp/item/308267
筆者は大分市で長年、反原発運動に取り組み、2001年に仲間とともにNPO法人「九州・自然エネルギー推進ネットワーク」を創設した。著書ではネットワークが手掛けた、太陽光発電システムを公共施設に取り付ける活動や、林業再生を兼ねたチップ燃料の販売や薪(まき)ストーブの普及活動などを紹介。さらに、小水力や太陽光、風力などで発電したクリーンな電力を売る「市民電力会社」の設立という夢に向けた課題やプランを解説する。
とりわけ印象深いのは、反原発活動に力を注いだ地元作家、故松下竜一との出会いをつづった第2章。松下が志半ばでこの世を去った今、筆者は「故松下竜一名誉会長」を掲げた市民電力会社を立ち上げたいと決意を語る。
● 「大分合同新聞」 2012.5.10
http://www.oita-press.co.jp/localNews/2012_133662885288.html
「暗闇の思想」の“現代版”を出版
中津市の作家で発電所の建設反対など市民運動家としても知られる故松下竜一さんが1972年に発表した「暗闇の思想」の“現代版”を、松下さんを師と仰ぐ大分市の小坂正則さん(59)が出版した。松下さんに共感し、共に活動してきた小坂さんは、著書で原発停止後に必要となる電力を“市民の力”で確保する方法を提案している。
「暗闇の思想」は当時の全国紙の新聞に掲載された約1500字の文章。「ただひたすらに物、物、物の生産に驀進(ばくしん)して行き着く果てを、私は鋭くおびえているのだ」。その文章は福島の原発事故を暗示していた―と小坂さんは感じている。
今回出版した「市民電力会社をつくろう!」(影書房)は、快適なエコ生活や太陽光発電の共同設置のノウハウなどを紹介。さらに、チェルノブイリ原発事故をきっかけに母親ら市民が設立し、「非原発」を訴えながら電気を供給するドイツの「シェーナウ電力会社」を理想的なモデルとして提案している。
小坂さんは市民活動をする中で松下さんと親交を深めた。2001年にNPO法人九州・自然エネルギー推進ネットワークを設立して代表を務め、公共施設に太陽光発電を設置したり、二酸化炭素削減などに効果があるまきストーブの普及などを勧めている。9年前に生前の松下さんと出版を約束していた。
「まず、電力がとめどなく必要なのだという現代の絶対神話から打ち破らねばならぬ。ひとつは経済成長に抑制を課すことで、ひとつは自身の文化生活なるものへの厳しい反省で、それは可能となろう」(「暗闇の思想」)。
現在問われている課題を40年前の文章から読み取った小坂さん。「(自著を)現代版として松下さんに報告するには恥ずかしい内容」と照れながらも、「原発停止後の電気をどうやってみんなで分かち合うかが重要。今こそ、松下さんの思想を多くの人と共有したい」と話している。
<ポイント>松下竜一さん
1937〜2004年。家業の豆腐屋を14年続け、68年に歌文集「豆腐屋の四季」を出版。翌年に緒形拳主演でテレビドラマ化された。記録文学を書き続けた。
●「出版ニュース」 2012.06.中
チェルノブイリ事故(86年)の直後、著者は大分で反原発運動を始める。運動の中で問われ続けた「原発止めたら電気はどうするの?」という声に回答を出したいと、「自然エネルギーによる地域の自立・再生」のプランを提起、01年にはNPO法人「九州・自然エネルギー推進ネットワーク」を立ち上げる。本書は、脱原発の実践として市民電力会社をつくり、エネルギー政策を根本的に変えるマニフェストだ。著者がこの取り組みに本腰を入れるきっかけになったのが、「暗闇の思想」を唱えた故・松下竜一氏との出会いだった。原発のない社会のあり方を展望する上で明快にして示唆に富む。
●「自然と人間」 2012.06
太陽光・風力・小水力など地域分散型発電所+スマートグリッド+省エネ・非電化対策≒自然エネルギー100%の未来社会! 「電気が足りない」というなら、より安全で、環境負荷が少なく、すべての人の命を守る、市民のための電気を、私たちがつくろうではありませんか。本書は、自然エネルギーで地域の自立と再生を訴える。
●「ふぇみん」2012.07.05
自然エネで地域が自立! 市民電力会社をつくるため、夢にかける思いと実践例を共有する。九州から3・11後の生き方を発信。
◆関連書◆
『暗闇の思想を/明神の小さな海岸にて』 松下竜一 著
『一緒に生きてく地域をつくる。』 生活クラブ連合会「生活と自治」編集委員会 編
『六ヶ所村ラプソディー――ドキュメンタリー現在進行形』 鎌仲ひとみ 著
『六ヶ所村 ふるさとを吹く風』 菊川慶子 著
『ヒバクシャ――ドキュメンタリー映画の現場から』 鎌仲ひとみ 著
『広島の消えた日――被爆軍医の証言』 肥田舜太郎 著
増補新版 『隠して核武装する日本』 槌田敦・藤田祐幸他 著、核開発に反対する会 編
『時代と記憶――メディア・朝鮮・ヒロシマ』 平岡 敬 著
『無援の海峡――ヒロシマの声、被爆朝鮮人声』 平岡 敬 著