関東大震災時のいわゆる「甘粕事件」で大杉栄と伊藤野枝が虐殺されたとき、甘粕正彦憲兵大尉らは大杉の甥の6歳の少年をも殺害した。少年の名は橘宗一。
幼い子どもを軍人が扼殺するという近代史上例を見ない異様な事件によって突然わが子を奪われた少年の父・橘惣三郎と、母で大杉の妹・あやめは、事件後それぞれの仕方で「カタキ」を討つ決意をする――。
これまでほとんど語られることのなかった橘宗一・惣三郎・あやめの、それぞれの知られざる道行きをたどる著者渾身の書き下ろし。
〈明治の「大逆事件」と同じく理不尽、不条理、不正義に被れた「甘粕事件」の実相により近づくには、たまゆらのような生であっても宗一少年、そして父惣三郎、母あやめの歩んだ道を目を凝らして見つめたい。/あやめの墓がないことを教えられたわたしは、知られざる三人の生の道を「甘粕事件」に即し、時代に沿って尋ねた。〉(プロローグより)
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〈著者・訳者 略歴〉
著者 田中 伸尚(たなか のぶまさ)
1941年東京生まれ。ノンフィクション作家。
『ドキュメント 憲法を獲得する人びと』(岩波書店)で第8回平和・協同ジャーナリスト基金賞、『大逆事件 死と生の群像』(岩波書店、のち岩波現代文庫)で第59回日本エッセイスト・クラブ賞。
他に『ドキュメント昭和天皇』(全8巻)『憲法を生きる人びと』(以上、緑風出版)、『日の丸・君が代の戦後史』『靖国の戦後史』『憲法九条の戦後史』『ルポ 良心と義務』(以上、岩波新書)、『抵抗のモダンガール 作曲家・吉田隆子』『未完の戦時下抵抗』『行動する預言者 崔昌華 ある在日韓国人牧師の生涯』『飾らず、偽らず、欺かず 管野須賀子と伊藤野枝』『一粒の麦死して 弁護士・森長英三郎の「大逆事件」』(以上、岩波書店)、『死刑すべからく廃すべし 114人の死刑囚の記録を残した明治の教誨師・田中一雄』(平凡社)、『反忠 神坂哲の72万字』『天皇をめぐる物語』(以上、一葉社)、『合祀はやいやです。心の自由をもとめて』『不服従の肖像』(以上、樹花舎)など多数。
(本書刊行時点)
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