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ロマ民族を知るための入門書

金子マーティン
ロマ 「ジプシー」と呼ばないで


2016年9月刊
四六判並製252頁
定価 2100円+税
ISBN978-4-87714-465-4 C0036

装丁:桂川 潤


●目次
●書評
●関連書



〈街から街へ、音楽を奏で歌い踊りながら家馬車で気ままな旅暮らし…〉そんな「ジプシー」に対する誤まったイメージやネガティヴな偏見はいまだ根深く残る。

ナチスによる大量虐殺、戦後も続いた迫害・差別と貧困のなか、あたりまえの人権を求めて立ち上がった、「ジプシー」の蔑称で呼ばれたロマ民族のほんとうの姿とは。

著者と交流のある世界各地に生きるロマ一人ひとりの人生に光を当てつつ、民族のルーツから近年のロマに対するヘイトスピーチ、ヘイトクライム頻発化による「再難民化」まで、その歴史的背景と現在の問題を追う入門書。偏見をのりこえ、レイシズムとセットの歴史修正主義に抗するために。




〈著者〉

金子マーティン
 かねこ まーてぃん

1949年イギリス・ブリストル市に生まれる。
83年オーストリア国籍を取得。78年ウィーン総合大学で哲学博士号を取得。91年から日本女子大学人間社会学部現代社会学科教員。

主な著書:『「ジプシー」と呼ばれた人々―東ヨーロッパ・ロマ民族の過去と現在』(共著、学文社)、『神戸・ユダヤ人難民1940-1941―「修正」される戦時下日本の猶太人対策』(みずのわ出版)、『「ジプシー収容所」の記憶―ロマ民族とホロコースト』(岩波書店)、『ジャーナリズムと歴史認識―ホロコーストをどう伝えるか』(共著、凱風社)ほか

主な日本語の訳書:アレクス・ウェディング著『エデとウンク 1930年ベルリンの物語』(訳・解題、影書房)、ロナルド・リー著『ロマ 生きている炎 少数民族の暮らしと言語』(訳、彩流社)、ミショ・ニコリッチ著『あるロマ家族の遍歴―生まれながらのさすらい人』(訳、現代書館)、ロマニ・ローゼ編『ナチス体制下におけるスィンティとロマの大量虐殺―アウシュヴィッツ国立博物館常設展示カタログ日本語版』(訳・解放出版)、『スィンティ女性三代記(上・下)』(訳・編著、凱風社)ほか






◆『ロマ 「ジプシー」と呼ばないで』 目次◆

第1章 ロマ民族に対する根強い偏見とロマの立ち上がり

1 中世から現在までつづく偏見、子ども誘拐犯としての「ジプシー」
2 ロマとの出会いを探し求めて
3 ぞくぞくと結成されたロマ組織とその法的成果


第2章 わたしの先生や友人であるロマの履歴と思い出

1 チャイヤ・シュトイカー:ナチ強制収容所の体験を語りつづけたロムニ
2 ハリ・シュトイカー:「悪の代名詞」を拒否するジャズ・ギタリスト
3 イリア・ヨヴァノヴィッチ:永遠によそ者と見なされない世界へ引っ越した詩人
4 ミショ・ニコリッチ:ロマの生活を赤裸々に描いた「放浪者」
5 ギッタ・マーテル:決してくじけないスィンティツァ
6 ロマニ・ローゼ:あたりまえの人権を求めて闘うロマのリーダー
7 ロナルド・リー:『ロマニ語辞典』を編纂したカナダ生まれのロム
8 イヴォンヌ・スリー:オーストラリアへ移住した誇り高きスィンティツァ
9 ムアレム・アブディ:ロマの子どもの教育支援に奔走する若きロム
10 エルナ・ラウエンブルガー(ウンク):ホロコーストの犠牲となった児童文学の主人公


第3章 ドイツ敗戦後のロマ民族

1 ロマ・ホロコーストの責任者たちは敗戦後どうなったか
2 ロマ民族の戦後補償
3 戦後も継続した「ジプシー特別把握」と「ジプシー特別法」
4 ロマ民族の生活実態――ドイツ連邦共和国を中心に


第4章 「反ジプシー主義」の台頭とロマの難民化

1 EU圏内で強まる「反ジプシー主義」
2 ロマ民族大量移住の第3波


第5章 ホロコーストの歴史をくりかえさないために

1 「歴史修正主義」勢力が唱えるインチキを見抜き、史実を知る
2 継続するロマ民族迫害の現実を知る


あとがき








書 評




●「聖教新聞」 2016年11月26日より







●「出版ニュース」 2016年11月中旬号より








● 小林健治さんの「社長ブログ 【ゲジゲジ日記】」2016年10月31日より

http://blog.ningenshuppan.com/?eid=1244037


(前記略)金子マーティン著『ロマRoma「ジプシー」と呼ばないで』(影書房)を読み終える。

現在EU圏で、最も差別され排除されている、スィンティ・ロマ民族(「ジプシー」は差別語)に関する歴史と現状を、当事者の訴えも含め、分かり易くかつ怒りを込めて解説した本。 

今現在も「身元を明かせば社会的に不利」な状況に置かれる。 差別されることを恐れるスィンティ・ロマ民族成員の過半数が、身元を隠さざるおえない厳しい現実がある。

「子供をさらうジプシー」「犯罪者集団ジプシー」と、中世から蔑まされてきたスィンティ・ロマが、ナチス・ドイツによるアウシュウィッツ・ビルケナウ絶滅収容所などで、人種優生思想により、ユダヤ人と同じく「劣等人種」と見なされ、60万人近く虐殺された事実は、ユダヤ人600万人虐殺の陰に隠れ、ヨーロッパでも認知度が低いという。(この事実の背景には、今なお「ジプシー」に対する強い差別意識がある)

「アウシュウィッツ・ビルケナウ絶滅収容所BⅡe区域」に「ジプシー家族収容所」が1943年に開設されている。 当時スィンティ・ロマは、ユダヤ人の「ダビテの星」と同じく、「ジプシー」と明記した黄色の腕章を義務付けられていた。  日本国内でもジプシーをすり集団など、「犯罪者集団」と見なした記述は多い。(後略)


小林健治さんの関連リンク http://rensai.ningenshuppan.com/?eid=207
「ウェブ連載差別表現 第189回 再び「ジプシー」(スィンティ・ロマ)表現を考える」







● 『日刊ゲンダイ』 2016年12月8日より 著者・金子マーティンさんへのインタビュー

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/195316

著者インタビュー
「ロマ『ジプシー』と呼ばないで」金子マーティン氏




「ジプシー」とは差別語であり、蔑称であることをご存じだろうか。日本では昭和歌謡界で使われたり、放浪するさまの例えで用いてきたが、今は使われていない。では、彼らをどう呼ぶべきか。

「『ロマ』です。社会的少数者は彼らが使っている名前で呼ばれるべき。数年前から日本の新聞でもロマという言葉を使うようになりましたが、はたして読者にどこまで浸透しているかはわかりません。また、移動型民族と言われますが、今は大多数のロマが定住者です。僕は毎年ロマの家を訪問しますが、移動していたら会えないですよね」

 ロマはインド発祥の少数民族である。慣習や文化の違いがメディアによってマイナスイメージ先行で伝えられ、特に欧州では今もなお根強い差別と迫害を受けている。

「ロマの半数以上は自分がロマであることを隠し、子供たちにも教えていません。アイデンティティーもロマニ語という言語も失われてしまうのは、民族にとって致命的です。それでも隠すのは、いまだに時代錯誤的な差別があるから。EU圏内でもロマ襲撃事件が多発し、命や生活を奪われています。信じ難いヘイトクライムが横行しているのです」

 著者がロマ研究を始めた契機は、39年前に読んだ雑誌だった。その記事で、ロマもユダヤ人同様にナチスの迫害を受けていたことを初めて知る。

「僕自身、7歳で日本に来て、その頃に差別された経験がありました。もともとは被差別部落の実態を調査していたのですが、己の不勉強を恥じましたね。ナチスに強制収容され、生き延びたロマに直接会い、信頼を得るまでに相当時間を要して、ロマが今も迫害されている現実を書いたこの本を出すのに、40年もかかりました」

 著者は日本語でジプシーと銘打った本は片っ端から読んだという。ロマと直接会ってもいない大学教授が書いたトンデモ差別本や、根本的に差別意識を持った女性が書いたエッセー本など多数検証した。

 この本では、ロマを迫害する歴史修正主義者(史実を矮小化したり、否定する人)の偽証を指摘。さらに欧州各国のロマ差別の実態と政府の対応の甘さ、そして日本を含むメディアの偏向報道にも斬り込んでいる。

「僕は学生に『資料批判が大事』と言っています。出版物もネット情報もうのみにするなと。大切なのは、たくさんの本を読むことではなくて、当事者たちに会うこと。事実を知らないのに偏見だけは持っている人が多すぎます。まずは、そこから変えることですね」(影書房 2100円+税)

▽1949年、英国生まれ。78年ウィーン総合大学で哲学博士号を取得、83年にオーストリア国籍を取得。91年から日本女子大学人間社会学部現代社会学科教授。著書に「『ジプシー収容所』の記憶―ロマ民族とホロコースト」などのほか、「エデとウンク 1930年ベルリンの物語」など、日本語訳書も多数。










◆関連書◆

 『エデとウンク―1930年 ベルリンの物語』 アレクス・ウェディング 著/金子マーティン 訳・解題

 『日本型ヘイトスピーチとは何か―社会を破壊するレイシズムの登場』 梁英聖 著

 『ヘイトスピーチはどこまで規制できるか』 板垣竜太・木村草太・LAZAK(在日コリアン弁護士協会) 編著

 『みんなが殺人者ではなかった―戦時下ベルリン・ユダヤ人母子を救った人々』
  ミヒャエル・デーゲン 著/小松はるの・小松博 訳

 『#鶴橋安寧―アンチ・ヘイト・クロニクル』 李信恵 著