人類の普遍的理念を守りつづけるために

伊藤成彦
物語 日本国憲法第九条
――戦争と軍隊のない世界へ


2001年12月刊(第3刷増補版=2006年1月刊)
四六判上製267頁
定価 2400円+税
ISBN978-4-87714-283-4 C0031



●目次
●書評
●関連書



法第九条が改廃の危機に直面するいま、その成立過程をつぶさに検証し、「勝者による押し付け憲法」説を反証。侵略・植民地支配という日本の負の遺産をしっかり見据え、改憲派や「自由主義史観」派の欺瞞性を暴きつつ、半世紀を経てなお維持される第九条こそ21世紀へ向けて人類が守るべき普遍的理念であることを明らかにする。オスナブリュック大学(独)での講義録を圧縮・再編し、読みやすく書き下ろした「第九条」物語。韓国語版「序文」とドイツ語版「序文」「あとがき」を増補した決定版。



〈著者略歴〉

伊藤 成彦(いとう・なりひこ)

1931年、石川県金沢市生まれ。
東京大学文学部ドイツ文学科卒業、同大学院で国際関係論、社会運動・思想史専攻。中央大学名誉教授。文芸評論家。ローザ・ルクセンブルク国際協会代表。
著書:『武力信仰からの脱却』(影書房)、『「近代文学派」論』(八木書店)、『共苦する想像力』、『戦後文学を読む』(ともに論創社)、『反核メッセージ』(連合出版)、『闇に育つ光』(谷沢書房)、『軍隊のない世界へ』、『ローザ・ルクセンブルクの世界』、『軍隊で平和は築けるか』(いずれも社会評論社)、『時評としての文学』、『闇を拓く光』、『東アジア平和共同体に向けて』(ともに御茶の水書房) 他。
訳書:ローザ・ルクセンブルク『ロシア革命論』(論創社)、ローザ・ルクセンブルク『ヨギヘスへの手紙』(共訳、河出書房新社)、パウル・フレーリヒ『ローザ・ルクセンブルク』(御茶の水書房) 他
(本書刊行時点)






◆『物語 日本国憲法第九条』 目次◆


プロローグ ウェストファリア平和条約から三五〇年

第1章 日本国憲法第九条とは何か?
 1 新憲法の成立
 2 新憲法の特徴
 3 なぜ、日本国憲法は「平和憲法」と呼ばれるのか
 プロムナード1 新憲法の原点――ポツダム宣言

第2章 第九条はどこから来たか?
 1 幣原内閣の登場
 2 民間・政党の改憲草案
 3 米国政府・日本政府・GHQの動き
 4 第九条の共同制作者――幣原喜重郎首相とマッカーサー元帥
 プロムナード2 「マッカーサー記念碑よりも第九条記念碑を」

第3章 アメリカの平和運動、パリ不戦条約と憲法第九条
 1 戦争違法化運動
 2 パリ不戦条約の成立と欠陥
 3 幣原・マッカーサーとパリ不戦条約・憲法九条
 プロムナード3 パリ不戦条約と日中戦争

第4章 日本近代史の中の憲法第九条(1)民権と国権の相剋
 1 明治維新と自由民権運動
 2 中江兆民の思想
 3 北村透谷の平和思想
 4 「社会民主党宣言」(一九〇一・明治三四年)の軍備全廃論
 5 幸徳秋水――日本最初の社会主義運動と「非戦論」
 6 反戦運動の広がり
 7 田中正造の平和思想
 8 韓国併合と大逆事件
 プロムナード4 お札の上の人物たち

第5章 日本近代史の中の憲法第九条(2)小国日本か、大日本帝国か
 1 「憲政擁護」から大正デモクラシー運動へ
 2 吉野作造の民本主義と平和主義
 3 大正デモクラシー運動が開いた世界
 4 石橋湛山の問題提起――大日本主義の幻想か、小国非武装の日本か
 5 幣原喜重郎の平和外交
 プロムナード5 朝鮮民族の三・一独立運動と日本

第6章 侵略・戦争と反戦・抵抗
 1 中国侵略と日独防共協定
 2 侵略の拡大と抗日・反戦運動
 3 日独の軍国主義・ファシズムと戦争
 4 北進から南進への転換――「大東亜戦争」へ
 5 抗日運動と強制連行
 6 沖縄・広島・長崎・満州――悲劇の連鎖の結末
 プロムナード6 満蒙開拓団と七三一部隊

第7章 冷戦・反共主義と憲法第九条の空洞化
 1 第一の空洞化――沖縄の米軍基地と天皇の秘密のメッセージ
 2 第二の空洞化――講和条約と日米安保条約(天皇の第二・第三の秘密メッセージ)
 3 第三の空洞化――再軍備
 4 朝鮮戦争と日本
 プロムナード7 「朝鮮特需」と堀田善衛の『広場の孤独』

第8章 明文改憲の失敗から解釈改憲へ

 1 改憲論の台頭と護憲運動の発足
 2 岸内閣の登場と憲法調査会
 3 安保改定と「改定」安保条約の実態
 4 池田内閣の登場と明文改憲論の放棄
 5 一九六〇-七〇年代の日本とドイツ
 6 経済の高度成長と「解釈改憲」
 プロムナード8 環境(命・自然・魂)闘争の象徴としての「ミナマタ」

第9章 改憲論第二波――日本企業の世界化と「国際貢献」論
 1 中曾根内閣の登場
 2 冷戦の終結と海外派兵
 3 「湾岸戦争への反省」――「金だけでなく、汗と血も」
 4 日米軍事同盟の世界化と沖縄の米軍基地
 5 憲法調査会の設置――明文改憲への助走
 プロムナード9 歴史の歪曲――教科書検定からマンガ「戦争論」・「日の丸・君が代」法へ

エピローグ 岐路に立つ憲法第九条

あとがき









書 評

(準備中)









◆関連書◆

 『武力信仰からの脱却――第九条で21世紀の平和を』 伊藤成彦 著

 『第9条と国際貢献』 勝守 寛 著

No image  『平和憲法を世界に』 平和憲法(前文・第九条)を世界に拡げる会 著

 『時代と記憶――メディア・朝鮮・ヒロシマ』 平岡 敬 著

 『広島の消えた日――被爆軍医の証言』 肥田舜太郎 著

 『隠して核武装する日本』 槌田敦・藤田祐幸他 著、核開発に反対する会 編

 『ヒバクシャ――ドキュメンタリー映画の現場から』 鎌仲ひとみ 著