敗戦のひと月前、米軍の艦砲射撃の標的となった室蘭の街。朝鮮から徴用され製鉄所で働いていたキム少年は、破壊された街を逃げまどう。そこへ突然、自分のことを「にいちゃん!」と呼ぶ風のような少女マサコが現れる。「いたどり谷へにげようよ、にいちゃん!」。
強いものだけが正しく優れている、そんな理屈が闊歩した戦争の時代。孤独な二人はどこを目指したのだろうか。表題作ほか、4つの作品を収録。
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〈著者紹介〉
富盛菊枝(とみもり・きくえ)
児童文学作家。日本文藝家協会会員。日本女子大学家政学部児童学科卒。
著書:『ぼくのジャングル』(1965年,理論社)
『鉄の街のロビンソン』(1971年,あかね書房)
『子どものころ戦争があった』(共著,1974年,あかね書房)
『わたしの娘時代』(編著,1974年,童心社)
『いたどり谷にきえたふたり』(1985年,太平出版社)
『おやおやべんとうくまべんとう』(1986年,ポプラ社)
『さまざまな戦後 第1集』(共著,1995年,日本経済評論社)
『51年目のあたらしい憲法のはなし』(共著,1997年,洋々社)
『金子みすゞ花と海と空の詩』(共著,2003年,勉誠出版)
『知里幸恵『アイヌ神謡集』への道』(共著,2003年,東京書籍)
『子どもの時のなかへ』(2004年,影書房)
『故郷の川を遡る鮭の背に』(2013年,影書房) 他
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