関東大震災の折の流言ひ語によって多くの朝鮮人が虐殺された。本書は、著者自身の貴重な体験にもとづく、先駆的な記録文学である。
「自警団に駆りだされたり、朝鮮人を匿まったり様々な体験をした」(解説より)著者は、その実体験をもとに震災翌年の1924年12月から翌25年3月にかけて、「台湾日日新報」夕刊に「羊の怒る時」と題して連載、同年10月に単行本として出版した。「関東大震災の記録として、おそらく我が国最初のものであろう」(解説)記録をこのプロレタリア作家に書かしめたものは何であったか。長く埋もれていた幻の名作65年ぶりの復刻。
「『羊の怒る時』は関東大震災の体験をもとに、その激動の三日間を臨場感をもって描いた貴重な記録であり、江馬修の思想上の一転機ともなった長篇である。私たちはそこに著者の歴史へのきびしい対応を読むことができる。」―尾崎秀樹
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〈著者紹介〉
【執筆】
江馬 修 (えま・しゅう、本名=えま・なかし)
1889年12月12日、岐阜県高山生まれ。斐太中学中退。
1909年上京、神田区役所等で働きながらアテネ・フランセ夜学で学び、創作を始める。
1926年渡欧。帰国後、日本プロレタリア作家同盟中央委員。
1932年郷里高山に帰りライフワーク『山の民』執筆のかたわら郷土研究雑誌「ひだびと」を発行、赤木清の筆名で考古学的論文を発表。
1946年12月、共産党に入党。1950年11月、「人民文学」創刊、編集長。12月上京、『氷の川』『本郷村善九郎』などの創作に専念。1966年離党。
1975年1月23日東京都立川市の自宅で没。
(主要作品については本書「解説」参照)
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