戦後文学エッセイ選
 2008年11月 全13巻 完結


敗戦後の日本に確かな足跡を遺した戦後文学者たちの代表的エッセイ20〜30篇を
独自の編集によって精選、全13巻に収め、その今日的意味を明らかにする。




本集の特色・「編集のことば」等は こちら



各巻内容



第1巻 
花田清輝集 (第1回配本)


 個人のオリジナリティーなどしれたものである。
 時代のオリジナリティーこそ大切だ。
   (――『復興期の精神』より)

 前近代的なものや大衆芸術を“否定的媒体”にして近代を超える方法を模索した花田清輝の文学・歴史・交友に関するエッセイを精選。

●収録エッセイ : 飢譜/歌―ジョット・ゴッホ・ゴーガン/汝の欲するところをなせ―アンデルセン/仮面の表情/林檎に関する一考察/アンリ・ルソーの素朴さ/芸術のいやったらしさ/魯迅/人生論の流行の意味/読書的自叙伝/男の首/再出発という思想/「実践信仰」からの解放/佐多稲子/風景について/柳田国男について/「修身斉家」という発想/もう一つの修羅/ブレヒト/ものみな歌でおわる/さまざまな「戦後」/大きさは測るべからず/蝉噪記/古沼抄 〔全25篇収録〕


2005年6月刊 四六判上製242頁 定価2200円+税
ISBN4-87714-331-9 C0395




第2巻
 
長谷川四郎集 (第8回配本)

 ランボーを論ずる大学の先生方はわんさといて、現代への憎悪を詩にする詩人がいたって少ないのがわが国だ
  (――「アンリ・ルソー」より)

 「シベリヤ物語」「鶴」等の戦争文学の傑作、ロルカやブレヒトの翻訳など、多彩で個性的な活動で知られる著者のエッセイを集成。

●収録エッセイ : 炭坑ビス/ソ連俘虜記/随筆丹下左膳/柳田国男/シベリヤの思い出/『審判』卒読ノート/詩人ブレヒト/ブレヒトの墓/菅原克己/わが友野間宏/断食芸人/ロルカとスペイン内乱/思い出の『アンナ・カレーニナ』/海太郎兄さん/知恵の悲しみ/私の翻訳論/道外的外套の話/パブロ・ネルーダの死を悼む/イワンの馬鹿/アンリ・ルソー/はなたきよてる/芝居に行きますか/日本のルネッサンス人≠フ死/否定によって肯定する人/「故事新編」と花田清輝/集団に埋没する匿名の精神/花田清輝と芝居/詩人の血/ピラト、手を洗う/変形譚 〔30篇収録〕


2006年12月刊 四六判上製248頁 定価2200円+税
ISBN4-87714-363-7 C0395





第3巻 
埴谷雄高集 (第3回配本)

 歴史は憂悶のこころを抱いた数多くの目撃者の沈黙をのみこんだまま、轟々と過ぎてゆく。
  (――「歴史のかたちについて」より)


 「還元的リアリズム」「永久革命者の悲哀」といった代表的エッセイのほか、原民喜、竹内好、花田清輝ら同時代の作家たちについて綴ったエッセイを収録。

●収録エッセイ :何故書くか/あまりに近代文学的な/三冊の本と三人の人物/農業綱領と『発達史講座』/歴史のかたちについて/還元的リアリズム/アンドロメダ星雲/永久革命者の悲哀/単性生殖/踊りの伝説/存在と非在とのっぺらぼう/闇のなかの思想/夢について―或いは、可能性の作家/アンケート/原民喜の回想/革命の墓碑銘―エイゼンシュテイン『十月』/「序曲」の頃―三島由紀夫の追想/「夜の会」の頃/戦後文学の党派性/花田清輝との同時代性/「お花見会」と「忘年会」/竹内好の追想/錬金術師・井上光晴/私と「戦後」―時は過ぎ行く/戦後文学「殺す者」「殺される者」ベスト・テン/時は武蔵野の上をも 〔全26篇収録〕


2005年9月刊 四六判上製248頁 定価2200円+税
ISBN4-87714-336-X C0395





第4巻 
竹内 好集 (第4回配本)


 古いものが、古いもののなかから生まれる力によって、みずからを倒すのでなければ、真の改革は実現されない。
   (――「ノラと中国」より)

 「概念から出発しない勇気と能力」(孫歌氏)、「西洋理論の物真似ではなく、自前の言葉で徹底的に突き詰め」「アジアを基盤とした思想を作ろうとしていた」(丸川哲史氏)と近年、再評価される竹内好氏の代表的エッセイ23篇。

●収録エッセイ :魯迅の死について/「藤野先生」/魯迅と許広平/「狂人日記」について/魯迅と日本文学/「阿Q正伝」の世界性/中国文学の政治性/魯迅と二葉亭/ノラと中国―魯迅の婦人放論/教養主義について/日本共産党論(その一)/亡国の歌/近代主義と民族の問題/インテリ論/文学の自律性など―国民文学の本質論の中/屈辱の事件/憲法擁護が一切に先行する/吉川英治論/花鳥風月/中国と私/朝鮮語のすすめ/「前事不忘、後事之師」/ともに歩みまた別れて―鶴見俊輔のこと 〔全22篇収録〕

2005年11月刊 四六判上製248頁 定価2200円+税
ISBN4-87714-338-6 C0395




第5巻
 
武田泰淳集 (第6回配本)  

 滅亡は決して咏嘆すべき個人的悲惨事ではない。もっと物理的な、もっと世界の空間法則にしたがった正確な事実である。
  (――「滅亡について」より)


 中国での戦場体験の衝撃を深く胸に刻み、「生きていることの恥」をたえまなく自らに問いかけつつ、日本の侵略の本質を凝視したすぐれた作品を残した著者による珠玉のエッセイたち。

●収録エッセイ :司馬遷の精神―記録について/美しさとはげしさ/谷崎氏の女性/滅亡について/無感覚なボタン―帝銀事件について/『あっは』と『ぷふい』―埴谷雄高『死霊』について/勧善懲悪について/中国の小説と日本の小説/『未来の淫女』自作ノオト/魯迅とロマンティシズム/限界状況における人間/竹内好の孤独/文学を志す人々へ/映画と私/サルトル的知識人について/戦争と私/根源的なるもの/三島由紀夫氏の死ののちに/わが思索わが風土/私の中の地獄/椎名麟三氏の死のあとに/「中国文学」と「近代文学」の不可思議な交流 〔22篇収録〕


2006年6月刊 四六判上製248頁 定価2200円+税
ISBN4-87714-349-1 C0395




第6巻
 
杉浦明平集 (第12回配本)  

 われわれはまだ抱きあうには早すぎる。そのまえに、もっと徹底的に、いささかの寛容もなく、争うことが何よりも必要なのである。
  (――「論争における魯迅」より)


 『ノソリダ騒動記』ほか、ルネッサンス文学研究、短歌、小説などの多分野で活躍した著者。社会問題の現場から、友人・知人、地元の人……。記録文学者の目がとらえた人間観察。

●収録エッセイ :ミケランジェロの夕暮/立原道造野思い出/明治文学と下層社会/アイヌの人、知里さんの思い出/尚江の朝鮮論/陽の当たらない谷間/論争における魯迅/土屋文明先生の弟子/政治の汚れと証言としての文学/文圃堂の人々/風吹けばお百姓がモウかる/巨大な巧哄笑の衝撃――『ガルガンチュワとパンタグリュエル』/ダンテの言葉と翻訳/ノン・フィクションと現代/短歌とわたし/子規私論序/レオナルド・ドキュメント/カワハギの肝/田所太郎のこと/雑草世界の近代化/花柳幻舟の会 〔全21篇収録〕


2008年8月刊 四六判上製244頁 定価2200円+税
ISBN978-4-87714-385-5 C0395





第7巻
 
富士正晴集 (第7回配本)  

 書くこと一切気に入らず
 読むこと一切苦患なり
 先行き 茫々 人生 漠々
 人生の象徴は はばかりながら わしでっせ
  (――詩「小信」より)


 竹林の茅屋から日本の戦後成長を根底的に問い続けた作家のエッセンス。

●収録エッセイ :植民地根性について/久坂葉子のこと/道元を読む/呆然感想/春団治と年上の女/わたしの戦後/八方やぶれ/私の織田作之助像/魯迅と私/『花ざかりの森』のころ/思想・地理・人理/VIKINGの死者/パロディの思想/マンマンデーとカイカイデー/高村さんのこと/美貌の花田、今やなし/子規と虚子/伊東静雄と日本浪曼派/ああせわしなや/私法・中国遠望/大山定一との交際/同人雑誌四十年/不参加ぐらし/ポイス短篇集/杉田久女の人と作品について/死者たち 〔全26篇収録〕


2006年8月刊 四六判上製248頁 定価2200円+税
ISBN4-87714-358-0 C0395





第8巻
 
木下順二集 (第2回配本) 

 どうしてもとり返しのつかないことを、
 どうしてもとり返すために
   (――戯曲『沖縄』より)


 日本ファシズムを成立せしめた日本の近代のありかた、運命に対峙して歴史の狭間を主体的に生きる人間のありようを劇作等を通じ探求した木下順二の文学・歴史・交友に関するエッセイを精選。

●収録エッセイ :カミュ『誤解』を読んで/民話について―劇作家として考える/日本が日本であるためには/「流される」ということについて/一九六五年八月十五日の思想/日本ドラマ論序説―そのいわば弁証法的側面について/芸術家の運命について/ある文学的事件―金嬉老が訴えるもの/シェイクスピアの翻訳について―または古典について/丸山先生のこと/断ちもの≠フ思想/森有正よ/寥廓/再び「流される」ということについて/加藤周一氏の文体について/『平家物語』はなぜ劇的か/茨木のり子さん―「が先決」をめぐって/議論しのこしたこと/複式夢幻能をめぐって/東京裁判が考えさせてくれたこと/『夕鶴』の記憶/私が決断した時/四〇年/ある終結/小さな徴候こそ/声(あるいは音)/宇野重吉よ/芝居が好きでない/螺旋形の“未来” 〔全29篇収録〕


2005年6月刊 四六判上製240頁 定価2200円+税
ISBN4-87714-332-7 C0395




第9巻
 
野間宏集 (第13回/最終配本) 

 戦争こそは私の体験の中心にあるものであった。
 私はこの戦争の体験にもとづいてすべてのものごとを見直そうと考えた。
  (――「像と構想」より)


 『真空地帯』『暗い絵』『青年の環』など、戦中の学生運動、従軍、服役等を経て、戦後文壇にデビューした野間宏。人間の全体をとらえようともがいた戦後文学者の思索の軌跡。

●収録エッセイ :ジイドのラフカディオ/小さな溶炉/小ムイシュキン・小スタヴローギン/布施杜生のこと/詩に於けるドラマツルギー/虎の斑/『暗い絵』の背景/像(イメージ)と構想/動くもののなかへ――詩人の発想と小説家の着想/綜合的文体――椎名麟三の文体/「破戒」について/木下順二の世界/象徴詩と革命運動の間/感覚と欲望と物について/青春放浪――「秘密」は見えなかった/わが〈心〉の日記/「青年の環」について/現代文明の危機/現代と『歎異抄』/『子午線の祀り』讃/サルトルの文学 〔全21篇収録〕


2008年11月刊 四六判上製242頁 定価2200円+税
ISBN978-4-87714-390-9 C0395





第10巻
 島尾敏雄集 (第10回配本) 

 沖縄を見失うことはわれわれの枯渇だ。
 われわれはそこを切離すことを肯んじではいけない。
  (――「『沖縄』の意味するもの」より)


 魚雷艇の特攻隊指揮官として、「即時待機」という特殊な状況下で終戦を迎えた経験と、「ヤポネシア」、「琉球弧」といったユニークな概念、視点にもとづくエッセイの精髄。

●収録エッセイ :偏倚/滑稽な位置から/舟橋聖一論/跳び越えなければ!/「沖縄」の意味するもの/加計呂麻島/奄美大島から/妻への祈り/埴谷雄高と「死霊」/非超現実主義的な超現実主義の覚え書/妻への祈り・補遺/ヤポネシアの根っこ/死をおそれて―文学を志す人びとへ/私の文学遍歴/繋りを待ちつつ/ニェポカラヌフ修道院/豊島与志雄小論/琉球弧の視点から/特攻隊員の生活―八・一五記念国民集会での発言/日本語のワルシャワ方言/伊東静雄との通交/昔ばなしの世界/うしろ向きの戦後/想像力を阻むもの/「つげ義春とぼく」書評/私の中の日本人―大平文一郎/記憶と感情の中へ 〔全27篇収録〕


2007年9月刊 四六判上製240頁 定価2200円+税
ISBN978-4-87714-373-2 C0395





第11巻
 
堀田善衞集 (第9回配本)

 文化、文明は、すべて異質なものとの衝突、挑戦、敗北、占領、同化、異化、克服の歴史なのである。
  (――「世界・世の中・世間」より)

 『広場の孤独』、『インドで考えたこと』、『審判』、『ゴヤ』、『スペイン断章』等の著書で、時間と空間を自在に往還する旅の中から、歴史や美術を縦横に、また自由に論じた著者のエッセイを集成。

●収録エッセイ :物いわぬ人/母なる思想/流血/堀辰雄のこと/個人的な記憶二つ/方丈記その他について/奇妙な一族の記録/魯迅の墓その他/良平と重治/インドは心臓である/ゴヤと怪物/中村君の回想について/今年の秋―十返肇のこと、加藤道夫のこと/「こんてむつす、むん地」/ゴヤの墓/芸術家の運命について/彼岸西風/ラ・バンデラ・ローハ!/樫の木下の民主主義に栄えあれ!/世界・世の中・世間/歴史の長い影/現代から中世を見る/誰も不思議に思わない/美はしきもの見し人は/二葉亭四迷氏と堀田善右衞門氏/国家消滅/モーツァルト頌/ベイルートとダマスカス/源実朝/怪異・西行法師/サラエヴォ・ノート/軍備外注 〔全32篇収録〕


2007年5月刊 四六判上製240頁 定価2200円+税
ISBN978-4-87714-367-1 C0395





第12巻
 
上野英信集 (第5回配本)

 筑豊よ 
 日本を根底から 
 変革するエネルギーの
 ルツボであれ 火床であれ
  (――上野英信・絶筆)

 筑豊の炭坑を拠点に、歴史の影に埋もれた民衆の姿を時代に刻印する記録文学の金字塔を打ち立てた著者の魂にふれるエッセイ集。

●収録エッセイ :この国の火床に生きて/私の原爆症/地下からの復権/日本人の差別感覚/母なる連帯の海へ/一本の稲穂/豚の孤独/ある救援米のこと/天皇制の「業担き」として/遠賀川/わがドロツキストへの道/ボタ拾い(抄)/わが廃鉱地図/『写真万葉録・筑豊1』人間の山 あとがき/私と炭鉱との出会い/闇のみち火/「死ぬるも地獄、生きるも地獄」/目隠しの鬼/「業担き」の宿命/『写真万葉録・筑豊10』黒十字 終わりに 〔49篇収録〕


2006年2月刊 四六判上製248頁 定価2200円+税
ISBN4-87714-342-4 C0395





第13巻
 
井上光晴集 (第11回配本)

 他者の自由をよろこび、不幸を感じとるこころ。それこそ文学の根底における優しさでしょう。
  (――「文学伝習所趣意書」より)


 被爆者、朝鮮人、被差別部落、炭坑夫……。常に底辺でもがきつづける民衆の側に立って日本社会の矛盾を凝視し、人間の解放を求め続けた作家のエッセイを精選。

●収録エッセイ :人間の生きる条件―戦後転向と統一戦線の問題/グリゴーリー的親友/ある勤皇少年のこと/わたしのなかの『長靴島』/フォークナーの技法/私はなぜ小説を書くか/芸術の質について―新日本文学会第十一回大会における問題提起/作家は今何を書くべきか/『妊婦たちの明日』の現実/アメリカ帝国主義批判―ソウルにいる友への手紙/生きるための夏―自分のなかの被爆者/なぜ廃鉱を主題に選ぶか―私の内面と文学方法/掲載されぬ「三島由紀夫の死」と「国を守るとは何か」/コンクリートの中の視線―永山則夫小論/高橋和巳との架空対談/埴谷雄高氏と私/顔/モスクワのカレーライス/大場康二郎/一九五六年秋/「文学伝習所」のこと/涯子へ/橋川文三との友情/一九八九年秋の心境/錦江飯店の一夜  〔25篇収録〕


2008年2月刊 四六判上製238頁 定価2200円+税
ISBN978-4-87714-382-4 C0395