〈特 色〉
○収録エッセイによって各著者の文学的・思想的活動の軌跡が理解できます。
○一つの主題で書きつがれた長篇評論・紀行等はのぞき、独立した主要なエッセイを選択・収録しました。
○巻末に収録エッセイ初出一覧、著書一覧、編集のことばを付します。
○各巻「栞」四頁投げ込み。
○巻頭に著者写真口絵一葉。
〈体裁・定価〉
体裁 四六判/上製/丸背カバー装/各巻約240頁
定価 各巻2,200円+税 *分売可
〈編集のことば〉
「戦後文学エッセイ選」の企画・編集・刊行は、極めて私的≠ネ発想によってすすめられることを、 まずおことわりします。といいますのは、この選集≠ノ収録させていただく戦後文学者の方がたはわたしがかつて未来社の編集者として在籍(一九五三年四月〜八三年五月)しました三十年間、つづいて小社でその著書の刊行にあたって直接出会うことができた方がたにのみ限らせていただくということです。出版の一般的常識からすれば、いささか異例の発想≠ニいわねばなりませんが、同時代にあって親しくその謦咳に接し、著書を作らせていただいた方がたのエッセイをのみ選び、あらためて世に問いたいという、わたしの編集者としてのこだわりとしてご理解下さい。
ところでエッセイについてですが、『広辞苑』(岩波書店)によれば、「@随筆。自由な形式で書かれた個性的色彩の濃い散文。A試論。小論。」とあります。日本では、随筆・随想とも大方では呼ばれていますが、それは、形式にこだわらない、自由で個性的な試みに満ちた、中国の魯迅を範とする雑文(雑記)≠ニいっていいかと思います。つまり、この選集は、小説・戯曲・記録文学・評論等幅広く仕事をされた十三氏の方がたが書かれた多くのエッセイ=雑文≠フ中から二十数篇を選ばせていただき、一巻に収録するものです。つまり、さまざまな形式で文学作品に取り組んだ戦後文学者の方がたばかりですが、その中からエッセイ――絵画の世界でいえばデッサン=素描の一部を集めさせていただくということになります。それぞれに膨大な文学的・思想的仕事を残された方がたばかりですので、各巻は各著者の小さな個展≠ニいっていいかも知れません。しかしそこに実は、珠玉のような文学精神の真髄が散りばめられているであろうことを疑わないものです。
本選集は、冒頭におことわりしましたような極めて私的≠ネ発想によってすすめられますが、それぞれの方がたへのまだ記憶にも新たなわたしの敬愛の念に根ざしていることはいうまでもありません。と同時に、戦後文学の全体像からすればほんの一端に過ぎませんが、本選集の刊行をきっかけに、わたしが直接お会いしたり著書を刊行する機会のなかった方がたをも含めての、戦後文学の新たなルネサンス≠ェ到来することを心から願って止みません。
読者諸兄姉のご理解とご支援を切望します。
2005年4月 戦後60年の節目にあたって
影書房 松本昌次
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