演出家と批評家による共同研究

関きよし・吉田一
木下順二・戦後の出発


2011年8月刊
四六判上製254頁
定価 2500円+税
ISBN978-4-87714-416-6


●目次
●書評
●関連書



袋小劇場の代表を長年つとめた関きよし氏と、劇作・演劇評論家である吉田一氏による「木下順二論」。劇作家としてのみならず、文学者、思想家としても活躍した木下順二の初期の劇作である『山脈(やまなみ)』(1950年)、『暗い火花』(1950年)、『蛙昇天』(1951年)の三作品を通して、木下が、天皇制ファシズムの時代から敗戦後、そして逆コースの時代を歩むことになる日本の「戦後民主主義」に賭ける思いを読み取り、現代の課題として再提示しつつ、作家が果たした芸術的・思想的業績の全体像に迫る。演出家と批評家の共同研究。



〈著者略歴〉

関きよし(せき・きよし)

1926年7月26日、東京府板橋に生まれる。父は玩具卸商の英治、母は茂(しげる)、ともに長野県中野市生まれ。19年生まれの兄幸夫がいた。
1943年、芝商業学校卒業。44年、早稲田大学入学。47年、文学部国史科在籍、新協劇団演出部に入る。51年、猿田日奈子と結婚。59年2月より練馬区中村三丁目在住。64年7月、長男定已生まれる。自宅で私設「風の子文庫」をひらく。
65年から舞台芸術学院講師、71年4月から2010年12月まで池袋小劇場代表。
著書に『夢空間―池袋小劇場の30年』(2003年新読書社刊)がある。


吉田 一(よしだ・はじめ)

1934年、東京に生まれる。1955年、「演劇集団土の会」を創立。
戯曲作品に『父さんもっと自分のことを話せよ』、『“回収不能”の戦記』など。
著書に、『青果「平将門」の世界』『藤原定家―美の構造』『久保栄「火山灰地」を読む』(以上、法政大学出版局刊)、『女のうた 男のうた』『演劇人こばやしひろし』(以上、西田書店刊)、『木下順二・その劇的世界』(影書房刊)、『ドラマチスト小島真木の半世紀』(ゆめ工房刊)がある。
全日本リアリズム演劇会議(全リ演)機関誌「演劇会議」の編集委員。

(本書刊行時点)






◆『木下順二・戦後の出発』 目次◆


まえがき(関きよし)

第一部 三つの現代劇の模索

はじめに――戦中体験と「戦後」
『山脈(やまなみ)』――山田は死んだが
『暗い火花』――実験精神と新しい質のドラマ
 一 「言葉」と「意識」の表現
 二 光と音と場面の設定と
 三 「虎よ虎よ らんらんと よるの森の深みに燃えて」の世界
『蛙昇天』――真実を真実として語ること
私たちが受けとめる課題――「まとめ」としても

対話 『暗い火花』――「池袋小劇場」の上演をめぐって

文学性の把握・木下のモチーフ/「プレ初演」・実験の実験/ことばの問題と「二つの時間」/〈知識人・労働者〉木下が描く主人公/話しあいの終わりとして/〈資料として〉羽山英作・大橋喜一の一九五七年の「劇評」から

第二部 木下順二についての二つの小論

 ぼくの戦後、木下順二、そして池袋小劇場の四十年(関きよし)
  木下順二作品とぼく
  語り部集団としての四十年
  木下順二作『でれすけほうほう』のとりくみから
  池袋小劇場を閉じる

 作家木下順二の原体験(吉田一)
  その一 作家への道を準備した「木下家」の存在
  その二 ドラマ発想に影響を与えた「兵役拒否」

あとがき(吉田一)









書 評

(準備中)









◆関連書◆

『木下順二・その劇的世界』 吉田一著

『木下順二集 戦後文学エッセイ選8』 木下順二著

『女優 山本安英』 宮岸泰治著

『ドラマが見える時』 宮岸泰治著

『ドラマと歴史の対話』 宮岸泰治著