「東京入管の救急搬送2回拒否事件」ドキュメント
(2019年3月12~13日)



 

 東京入管の救急搬送2回拒否事件を、当方の録画や録音を中心に時系列でまとめました。私たちの把握している情報のみで構成していますので、正確でない部分もあるかもしれませんが、情報をお寄せいただければ訂正します。(影書房)


*  *  *


●時系列


■2019.3.12
20時過ぎ
入管前着。バス停前にいらしたご家族の方に状況を聞く。今朝メメットさんから電話が来て、「体調が非常に悪い、もうもたないかもしれない」「息が苦しい、頭が痛い、胸が痛い、手足がしびれる」などと訴えられ、ふだんあまり弱音を吐かないので心配、と。
その後みんなが集まってる裏口(職員通用口)の方へ。すでに30人ほどの仲間や支援者が集まっていた。
仲間の男性が119番で呼んだ救急車がすでに到着していた(1回目の救急車)。

20:42 誰も乗せていないカラの担架を押して救急が出てくる。


救急車を呼んだ男性や支援者たちが説明を要求。救急隊員(救急救命士もいた)は、入管・看護師(准看護師との報道も:朝日)の説明を受けて「搬送の必要はなしと判断した」と。あとは入管の説明を聞いてくれ、と。
仲間たちの指笛と拍手(これは相手に対する痛烈な皮肉を込めた批判である)のなか、救急車はそのまま帰ってしまった。なぜ診察もせずに帰ったのか、みなの不信感が高まる。


21:22 入管(総務課広報)の説明を受けるために、メメットさんの奥さんと弟さんが入管内に入る。

入る前のやりとりでは、救急車も帰ってしまったし、メメットさんの状況を知りたいと支援者が要請。入管は親族にだけ説明するという。説明するのは医療関係者なのかと聞くと、入管職員だという。メメットさんを直接診た医療関係者の説明でなければ、ご家族も納得・安心できない、あるいはご家族が直接メメットさんに会えなければ、入管の説明をそのまま信用することはできない、本人は「苦しい、朝までもたないかもしれない」と言っているのに、と要請していた。

入管はご家族に説明する代わりに、ほかの人たちは全員敷地外に出るように、と意味不明の交換条件をつけてきてなかなか親族を中に入れようとせず、すんなり説明することを拒んだ。
結局、お二人は中に入り、外の支援者は少し下がった。しかしその後、警官の数が増えてバリケードが強固になり、夜間用のインターホンにすらさわれなくなった。

22:20頃 メメットさんの奥さんと弟さんが入管内から出てくる。奥さんは出てきた途端、ふらついて倒れ込んでしまった。

話しを聞くと、救急隊員は看護師が朝までいて見廻るからとの入管の説明を受けて帰ったのだが、入管の説明では看護師は帰ったという。いろいろ説明が食い違う。メメットさんは救急隊員に直接診てもらっていないことも確認。不信感が募る。

22:50頃 日本人の支援者が消防へ電話して確認。消防は「看護師から、メメットさんに直接会ってバイタルチェックをして今は問題ない、と聞いた」と、「私たちが夜も巡回するので大丈夫だ」と、「だから救急は引き上げて下さい」と言われたとのこと。もう一回来てくれないか、と聞いても「入管と話してください」と。

そもそもせっかく救急が来たのに本人に会わせない入管もひどいが(そんな権限があるのか?)、本人が具合が悪いと言っているのに、その当人と会わずして入管に言われるがままにそのまま帰ってしまう救急隊員も相当おかしいのではないか?

23:21 支援者が消防に再要請(119では対応してくれず、救急相談センターに電話)して、再び救急車が到着。


30分ほどたって何の動きもないので、診察は終わったのか、最中なのか、終わったのなら家族に説明すべきだろう、状況を説明してくれと、支援者が要請。救急車の近くで連絡係のようなことをしていた警官にも、同様の要請をする。
この警官は10分くらい後に支援者のところに報告に来るが、中の入管職員と救急とで話し合いをしていると、詳しい中の状況はよくわからない、とのこと。動きは無し。


消防車もなぜかセットできていたが、いつの間にかいなくなり、その後、救急車も走り去った。

■2019.3.13
0:20頃
救急車が走り去るのを目撃。別の出入り口から搬出するのかと思い、正面玄関へ走ってみるが気配なし。
戻って「救急車がいなくなっている」と報告。入管に説明を求めるが、誰も口を利かない。だんまり。
10分くらい後、救急車のそばにいた先ほどの警察に聞くと「消防はもう引き上げましたよ」としれっと言う。中に入った救急隊員はまだ中にいるのか、無線で聞いてくれ、と頼んでも、「それは入管の人に聞かないと分かりません」とかなんとか。みんなは出てくるのを待ってるのに何の説明もない。


後に、救急はすでにどこか別の出入り口からみんなに気付かれないようこっそり帰ったということが判明。もちろん家族にも救急車を呼んだ人にも何の説明もなしに。
救急も警察も、無線で入管の中に入ったそれぞれの人間と連絡を取り合っていたことは確認済み。そして救急車の運転手とその近くにいた警官は互いに情報交換をしていたことも確認している。つまりこの状況は入管・警察・消防(救急)の三者によってつくり出されたものであると考えざるを得ない。

救急が本人を診たのかどうか、当人の状況がどうなのか、確認できないままなので、みんなの心配は高まる一方。
もうメメットさんは亡くなってしまっているのではないか、だから救急も診察せずに帰ったのではないか、との疑念も生まれる。普段の職員の態度からして収容者やその家族を人間扱いせず、平気でウソをつき、その場しのぎのごまかしを言うなどの不誠実な態度からは、こうした疑念が生まれるのも当然だ。
何の説明もしない入管へ不信感は高まるばかり。

気が付くと、バリケードの警官と背広を着た警察のみで、入管職員は誰一人姿を消してしまっている。支援者から「そもそも体調不良を訴えたときに入管がきちんと医療につないでいれば、こんな状況になっていない。先ほどの救急は本人に会ったのか、説明して確認が取れればみんな納得して帰ることができる、入管の人は出てきて説明してください」と何度も訴える。

1:13 突如、入管の職員(総務のカワサキ氏)がトラメガを持って登場。


カワサキ氏:「皆さん聞いてますか? 今日はもう説明することはないんでお引き取り下さい。ご家族の方にはもう説明はしています。もう説明することはありません」
奥さん:「本人の声が聴きたい」
カワサキ氏:「本人はいま寝てます。大丈夫です」
支援者:「家族の説明ではよくわからなかったのでもう一度説明してください」
カワサキ氏:「もう説明はできません。1時間かけて説明したでしょう」「救急隊にも説明しました。納得いただいてお帰りいただきました。これ以上話すことはありません」
支援者:「公務員として説明責任を果たしてください」「2回めの救急隊員は直接患者さんを診たんですか?」「そもそも何でお医者さんの判断がないんですか?」
別の入管職員らしき人:「何回も同じこと言ってますけども、これで終わりますので、失礼します」
と一方的に打ち切って中へ引き上げてしまう。
【トータル約4分の「説明」終了】

メメットさんの健康状態に対する客観的・具体的な説明がないまま「もう説明した」「大丈夫」と言われても信用できるわけがないし納得できるわけがない。
「電話だけでも」というご家族の声も無視された。
あとは再び警官の壁が立ちはだかるのみ。膠着状態に。


地面に毛布をかぶって寝る人、壁にもたれて休む人など、徹夜体制に。
3月の夜空の下は相当に寒い……。

(私たちは26時頃、現場を離れて帰途につきました。)


東京入管。建物ばかり立派な人権四流国家・日本の象徴のように見える